• 協働事例

市民が動き、地域が変わる:近畿で進む気候市民会議の実践と展開へ

市民が動き、地域が変わる:近畿で進む気候市民会議の実践と展開へ

※イベント「地域での「気候市民会議」開催に向けたセミナー&勉強会「地球温暖化や地球環境問題をジブンゴトにする」の様子

気候変動対策という大きな社会変革を進めるうえで、市民一人ひとりが当事者として理解し、納得し、動き出すための仕組みが求められています。その鍵のひとつが、社会の縮図となる人々がバランスの取れた情報提供を受けながら数週間〜数か月にわたり熟議する「気候市民会議」です。

当時近畿での開催事例はなく、気候市民会議の体験者を増やし、各地で開催数を増やして浸透させることが気候変動に対して有効なアプローチの1つと考えていました。そこで、きんき環境館は、脱炭素社会への移行に向けた受容度の向上を目的に、近畿圏での実施に向けて動き始めました。

※気候市民会議とは
社会全体の縮図を構成するように無作為抽出で選ばれた参加者が、専門家の中立かつ多面的なインプットを受けながら、気候変動対策について熟議し市民提言をまとめるプロセスです。2019年以降は欧州で広がり、日本でも2020年に札幌で初めて試行され、以降各地に広がりつつあります。

■ 施策1:「多様な開催」を模索するワークショップの展開(2023年9月、12月、2024年4月)


グループワークの様子

話題提供の様子

気候市民会議の実践を研究されている八木絵香氏(大阪大学COデザインセンター 教授)と協働し、「気候市民会議の多様な開催を考える」と題したワークショップを3回開催しました。

【アプローチ】
当時、当館が調べた限りでは、近畿地方での気候市民会議の開催事例はありませんでした。本格的な開催には、自治体の関与や無作為抽出による市民選定など、一定のハードルがあります。そこで、まずは気候市民会議への関心を高め、開催のハードルを下げるため、「気候市民会議には定型があるが、実施形態は多様でよい」という視点を提示しました。

  • 第1回…先駆的な事例を行政と市民の視点から学び、近畿での実施に向けた課題や可能性を議論
  • 第2回…身近な職場やコミュニティで実践できる「多様な開催の形」に焦点を当て、カードゲーム型プログラムの体験などを通して、参加者が「自分たちにできること」を深掘り
  • 第3回…第1回・第2回で出てきた意見を踏まえ、一般的な議論から個別の構想・企画・実践へと論点を移し、より少人数での深い議論を実施

【成果】
自治体職員、NPO、学生、企業など、多様な立場の参加者が集まり、3回の実施で累計116名(登壇者等を含む)が参加しました。本ワークショップを契機に、「実際の気候市民会議に近い形でイベントを開催してみたい」という具体的な意欲が生まれました。

 ■ 施策2:多様な開催の第一歩「大阪いばらき気候市民会議」の実施(2024年12月)


オンラインを繋げた質疑応答の様子

模造紙を使ったアイデア共有の様子

これまでの3回にわたるイベント参加者の中から、茨木市で市民有志を中心とした実行委員会が形成され、「未来のまちづくりワークショップ:大阪いばらき気候市民会議2024」が試験的に開催されることとなりました。

【アプローチ】
茨木市環境政策課の担当者の方から、茨木市における地球温暖化対策の概要説明を行いました。また、京都女子大学現代社会学部の教授からは、気候変動問題や再生可能エネルギーを考える上で多角的な視点となる話題提供を行いました。

【成果】
37名の参加があり、気候市民会議の地域開催として近畿初(当館調べ)の事例となりました。参加者の活発な意見交換から生まれたアイデアをもとに、実行委員会が市民アクションプランを取りまとめています。茨木市では「いばらき気候市民会議企画チーム」が発足し、パブリックコメントへの意見提出や市長への提言書提出など、市民が主体的に政策に関わる仕組みづくりが進んでいます。また、本イベントへの参加者から「自分の住む地域でも実施したい」という相談が、きんき環境館へ寄せられました。

■ 施策3:広がる「ジブンゴト」の輪、より具体的なアクションに向けて(2025年10月)

グループワークでのファシリテーションの様子
趣旨説明の様子

これまでのイベント参加者や関係者をはじめ、気候市民会議に関心のある人や、自分の地域での実施を検討している人たちと連携し、セミナー&勉強会を開催しました。「地球温暖化をジブンゴトにする」をテーマに、開催手順の習得だけでなく、現場で直面するリアルな課題に向き合う対話の場を設けました。

【アプローチ】
気候市民会議の開催に向けた具体的な手順や、準備段階で生じる様々な「モヤモヤ」を解消するため、対話型の学びの場を提供しました。関心の高い参加者を中心に、実行委員会のような形で企画段階から協働することで、実際のイベント開催に必要となるノウハウを共有しました。

【成果】
自治体、企業、市民団体、学生など合計41名が参加し、各地域での気候市民会議の開催に向けた具体的なアクションや情報が活発に意見交換され、関心を持つ関係者のネットワークが構築されました。また、本イベント参加者を中心としたメンバーにより、関西での気候市民会議開催を検討する研究会が2025年12月11日に大阪大学COデザインセンター主催で開催されました。研究会には大学、自治体、市民団体など計17名が参加し、近畿圏での気候市民会議開催に向けたノウハウ共有や情報交換、ワークショップが行われました。

■  提供価値:知と情熱を社会実装へつなぎ、展開する

  • 学術 × 行政のハイブリッド
    大学の理論に環境省近畿地方環境事務所の共催が加わることで、信頼性と実効性の高いプログラムを共同設計。
  • 広域ネットワークによる「成功事例の水平展開」
    近畿圏での自治体・団体とつながるネットワークを活かし、一カ所での学びを他地域へ共有。孤立しがちな地域の実践者を結びつけ、近畿圏全体のボトムアップを促進。
  • 対話の質を高めるファシリテーション
    気候変動という正解のないテーマでも、多様な声を丁寧に拾い、合意形成の質と満足度を高める。

これからも、きんき環境館は、政策・学術・行政・企業・市民をつなぐ中間支援機能を強化し、地域での実践を支える対話の場づくりと知の共有を通じて、近畿圏における持続可能な地域づくりの推進に取り組んでいきます。

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