お知らせ
梅雨空の下、奈良と京都の県境にある京都府南山城村にある農林産物直売所では、「オーガニックマーケット」が開催されていました。
当日は雨に加え、一部道路が通行止めとなるなど決して恵まれた条件ではありませんでしたが、
会場には地域の農林産物や加工品を目当てに多くの人が訪れ、終始にぎわいを見せていました。
その一角で野菜を並べていたのが、「奈良コミュニティコンポスト」の皆さんです。
「地域循環共生圏づくり支援事業」の参加団体として3年目を迎え、活動がどのように育ってきたのか、実際に体験させえもらいながらお話を伺いました。
販売されていたのは、コンポストでできた堆肥を活用して育てた野菜やコミュニティのメンバーが育てた農作物。
来場者は農林産物を手に取りながら、生産方法やコンポストについて自然と会話を交わしていました。
一見すると地域の小さなマルシェの風景ですが、その背景には、生ごみを資源として循環させる取組だけでなく、
人と人がつながり、地域の新たな活動が育まれていく物語がありました。



「食べ物のその先」を考えたことから始まった活動
コミュニティコンポストの活動が始まったきっかけは、一人の小さな疑問でした。
中心となって活動する小國さんは、以前、菓子店を営んでいらっしゃったとのこと。お菓子づくりを通して農家や生産者と関わる中で、
食べ物が生産され、加工され、消費される流れを身近に感じていたといいます。
その中で、「自分はつくる側じゃなくて、受け取る側にいる」「いただいてばかりの一方通行ではなくて、
わたしにもできることはないか」という思いが芽生えたそうです。
そうした疑問からコンポストについて学び始め、コンポストアドバイザーである「ハト畑」の坂内さんとの出会いをきっかけに、
その思いは地域での実践へとつながっていきます。
また、子育てをする中で社会とのつながりが薄れていくことへの寂しさを感じていたことも、活動を始める後押しとなりました。
「コンポスト」は生ごみを堆肥に変える仕組みであると同時に、人が集い、
地域とのつながりを育む場にもなり得る——そんな思いが少しずつ形になり、現在は活動開始から3年目を迎えています。
メンバーは「畑部」として農作物を育て、コンポストから生まれた堆肥を活用した野菜づくりにも取り組んでいます。

「育てる」から「届ける」へ。循環をつなぐマーケット
今回開催されたオーガニックマーケットは、奈良コミュニティコンポストにとって初めての出店となりました。
イベントを企画した坂内さんは、コンポストの普及活動に携わる中で、「堆肥をつくること」だけでは循環は完結しないと考えていました。
堆肥で育てた野菜を地域の人へ届け、その価値を知ってもらうこと。そして、生産者と消費者が直接顔を合わせ、言葉を交わす機会をつくること。
その一連の流れがあってこそ、本当の意味で地域の循環が生まれるのではないか——そんな思いから、このマーケットが企画されました。
会場では、野菜を購入した来場者が足を止め、コンポストの仕組みや活動について質問する姿も見られました。
堆肥をつくる人、野菜を育てる人、それを手に取る人。小さなマーケットには、それぞれの営みがゆるやかにつながる風景が広がっていました。
この日生まれたのは、農産物の売り買いだけではありません。環境や暮らしについて語り合い、
新たなつながりが生まれる場としての価値もまた、このマーケットには息づいていました。

――コンポストから広がる、対話と協働のかたち(後編)に続く