地域循環共生圏づくりの推進

【開催報告】ワークショップ「気候市民会議の多様な開催を考える・その2」@大阪大学中之島センター

更新日:2024年02月08日

2023年12月22日(金)、大阪大学中之島センターにて、ワークショップ「気候市民会議の多様な開催を考える・その2」を開催しました。

当日は、自治体職員、気候変動問題に取り組むNPO関係者や大学生、脱炭素社会に向けた取り組みを進める企業のみなさんなど、様々な立場から気候市民会議に関心を持つ、53名(登壇者等を含む)の参加がありました。

<開催概要>
○日時:2023年12月22日(金)13:30~17:30
○会場:大阪大学中之島センター5階
○主催: 大阪大学COデザインセンター、環境省近畿環境パートナーシップオフィス(きんき環境館)
○共催: 公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)、大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)、環境省 近畿地方環境事務所
*本ワークショップは、科研費基盤研究(B)「『科学・公民』教育としての気候市民会議プログラムの開発」(JP 23H01020)の一環として実施。

開催案内ページはこちら:http://stips.jp/20231222/

気候市民会議とは、社会全体の縮図を構成するように一般から無作為で選出された人たちが、専門家からバランスの取れた情報提供を受けながら、数週間から数か月かけて気候変動対策について議論する市民会議です。
2019年から欧州各国で行われるようになり、日本でも2020年に札幌で初めて試行された後、各地で実施が相次いでいます。しかしその開催は関東圏が中心であり、関西での開催実績や具体的な計画は見られません。

9月1日に開催された第1回目のワークショップでは、日本で先駆的に行われている事例について、自治体職員、市民団体の立場からの話題提供を受け、これまでとは異なるスタイルの気候市民会議の実施の可能性について議論を行いました。
第1回目のワークショップの参加者からは、大きく分けて次の2つの進みたい方向が示されています。
1)本格的な気候市民会議を関西圏でも実施したい。具体化するための方法について皆で話し合いたい。また、その検討も含めて、市民の声を政策に反映させる方法について考えたい。
2)本格的な気候市民会議とまでは難しいけれど、脱炭素社会にむけて、自分たちの職場やコミュニティで、できることを考えたい。そのための具体的な方法について知りたい。

第二弾となる今回のワークショップでは主に、2)の方向に焦点をあて、組織やコミュニティの中で気候変動・脱炭素社会を考えたり、気候市民会議の知識を共有したりする、いわば機運を醸成するための手段や情報の共有、ネットワークづくりを目的として開催しました。

この日は、2部構成。第1部は、気候市民会議やそれに類する様々な取り組みについて簡単なレクチャーを受けたのち、カードゲーム型プログラムを体験しました。続く第2部では、ゲームの体験も踏まえ、自分たちの職場やコミュニティでできる脱炭素社会に向けた話し合いの方法について、参加者によるグループディスカッションを行いました。

第1部では、冒頭に八木絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)と、福嶋慶三(環境省近畿地方環境事務所 環境対策課長 兼 地域脱炭素創生室長)より、今回のワークショップの趣旨と開催の挨拶があり、続いて、ゲストからの話題提供がありました。

話題提供(1)気候市民会議とは?を改めて(PDF:2.6MB)
三上 直之さん(名古屋大学大学院環境学研究科 教授)
前回の振り返りの意味を込めて、「気候市民会議とは何か」の説明と、欧州における実施状況や広まりについて改めて紹介していただきました。また、日本で開催されている気候市民会議についても、市民の参画の様子や、気候市民会議の結果をどのように政策に結び付けているかなどの情報提供がありました。

話題提供(2)趣旨説明&具体の方法論(PDF:4.3MB)
八木 絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)
脱炭素社会にむけた動きを進めていくために、自分自身の組織やコミュニティで採用できる具体的なツールについての説明がありました。

ゲストからの話題提供のあとは、参加者全員で持続可能なまちづくりや地域づくりについて学ぶことができるカードゲーム型プログラム「脱炭素まちづくりカレッジ」を体験しました。

「脱炭素まちづくりカレッジ」の進行は次のお二人にお願いしました。
森 雅貴さん(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン ディレクター)
秋田 大介さん(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン フェロー、株式会社イマゴト 代表取締役)

「脱炭素まちづくりカレッジ」は、参加者が、行政、金融、企業、産業などの地域プレイヤーの役割を担い、プロジェクトの実行や他者との協働を通して、地域及び自身の二酸化炭素排出量を半減させるという目的を達成するシミュレーションゲームです。通常は、「気候危機に関するレクチャー」「ゲーム」「実際の暮らしの中における酸化炭素排出量可視化や、削減のためのプロジェクトを企画するワーク」の3部構成ですが、今回はゲーム部分のみを取り出して体験しました。

体験の後、参加者からは「他の職業の人たちの動きは見えないが、複合的な要因で排出量が削減されていったのがわかった」「誰がどんな情報や資金を持っているか分からなかったため、自分たちも積極的に情報開示する必要があった」「自分自身の収支を気にして実施しなかったプロジェクトも、やれば町全体の削減のためになったはずなので実施したらよかった」などのコメントが寄せられました。

コーヒーブレイクをはさんで第2部では、6つのグループに分かれてディスカッションを行いました。

自治体、企業、NPO、市民団体、学生団体、学校教員などの多様な参加者が、自分たちの課題、普段行っている活動のシェア、今後やりたいことなどを中心に、気候市民会議や気候変動等を取り上げるための課題等について、様々な意見や事例を共有しました。

グループディスカッションでは、組織の中での提案や実現方法、それぞれの組織単独で活動の幅を広げることの課題、気候変動という複雑な要因と現象を伴い、簡単に効果の見えない問題に対し当事者意識を持つことの困難さ、などがあげられました。その一方で自治体の取組や、自治体と学校・大学の協働などの事例も共有されました。

また気候市民会議の開催についても「名称がこわい(固い)」「もう少し気楽なイベントから始めてみたい」などの意見とともに、様々な組織・団体をつなぐ仕掛け、ツールとして「市民気候会議」が機能している事例も紹介されました。

会の終わりには、ゲストの三上直之さんと、主催の八木からの「気候市民会議は、開催の手法については定型化されつつあるが、気候市民会議の開催によって気候変動の問題解決が早まるというわけでは決してなく、むしろ、様々な人が関わらなければこの問題が解けないことを顕在化させるためのツールであるということ」「すっと正解が出ないような問題を、そのプロセス自体をある意味楽しみながら取り組んでいくことが重要ではないか」というコメントで、本ワークショップは閉会となりました。

環境教育等促進法

正式名称は「環境教育等による環境保全の取り組みの促進に関する法律」(平成23年6月改正)。環境行政への民間団体の参加と、多様な主体による協働を推進するための規定が多く盛り込まれている。

協働取組

国民、民間団体等、国又は地方公共団体がそれぞれ適切に役割分担しつつ、対等の立場において相互に協力して行う環境保全活動、環境保全の意欲の増進、環境教育その他の環境の保全に関する取組。

ESD

持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)。一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境と関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革するための教育。

地域循環共生圏

各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方。

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