地域循環共生圏づくりの推進

【開催報告】「気候市民会議の多様な開催を考える」 @大阪大学中之島センター

更新日:2023年09月19日

2023年9月1日(金)、大阪大学中之島センターにて、ワークショップ「気候市民会議の多様な開催を考える」を開催しました。

当日は、自治体職員、気候変動問題に取り組むNPO関係者や大学生、脱炭素社会に向けた取り組みを進める企業のみなさんなど、様々な立場から気候市民会議に関心を持つ、48名(登壇者等を含む)の参加がありました。

<開催概要>
○ 日時:2023年9月1日(金)13:30〜17:30
○ 会場:大阪大学中之島センター5階
○ 主催:大阪大学COデザインセンター、環境省近畿環境パートナーシップオフィス(きんき環境館)
○ 共催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)、大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
*本ワークショップは、科研費基盤研究(B)「『科学・公民』教育としての気候市民会議プログラムの開発」(JP 23H01020)の一環として実施。
開催案内ページはこちら:http://stips.jp/20230901/

気候市民会議とは、社会全体の縮図を構成するように一般から無作為で選出された人たちが、専門家からバランスの取れた情報提供を受けながら、数週間から数か月かけて気候変動対策について議論する市民会議です。2019年から主に欧州各国で行われるようになっており、日本でも2020年に札幌で初めて試行された後、各地で行われるようになっています。

今回のワークショップは、近畿圏における気候市民会議の開催にむけて、自治体、NPO組織、市民団体、企業等が情報を共有し、実施にむけた課題や、具体的なアイディアについて意見交換を行うことが目的でした。

この日は、2部構成。第1部は、気候市民会議について、また、日本で先駆的に行われている事例について、ゲストから話題提供をしていただき、続く第2部は、参加者によるグループディスカッションを行いました。

冒頭に八木絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)と、福嶋慶三(環境省近畿地方環境事務所 環境対策課長 兼 地域脱炭素創生室長)より、趣旨説明と開催の挨拶がありました。

続いて、ゲスト3名からの話題提供です。以下、講演スライド(PDF)も併せてご覧ください。

話題提供(1)気候市民会議とは何か(PDF:3.9 MB)

 三上 直之さん(北海道大学 高等教育推進機構)
そもそも「気候市民会議」とは何か、誰がどのように、何を行うか。欧州での実施状況や、特に無作為選出型をベースとする参加者選定方法の実際とその意味について説明がありました。その上で、日本での具体的な導入状況が紹介されました。
また、日本における実践をよりインパクトのあるものにするための「鍵(課題検討)」として、1)本質的な問いの設定が大切であるということ、2)気候市民会議の権限が明確に定められていること、3)コミュニケーションの設計・戦略も重要であること、という3つの視点が示されました。

話題提供(2)「『気候市民会議さっぽろ2020』について」(PDF:4.8 MB)

 佐竹 輝洋さん(札幌市環境局 環境都市推進部 環境政策課 環境政策担当係長)
日本で最初に「気候市民会議」を開催した札幌市の事例について、行政の立場から事例の報告がありました。実施を支えた背景として2020年2月に札幌市が行った「ゼロカーボンシティ宣言」や、高校生等による街頭活動、市民参加型のパネルディスカッション等が紹介され、実施にあたっての行政としてのスタンス、無作為抽出の具体的な方法などが説明されました。
気候市民会議開催の結果、市民の関心の所在や広がりが行政の中でも認識され、また市民が必要とする情報がどのようなものかを把握するうえでも有益であったことが紹介されました。

話題提供(3)「あつぎ気候市民会議の事例について」(PDF:4.8 MB)

 遠藤 睦子さん(あつぎ気候市民会議 実行委員会 事務局長/一般社団法人あつぎ市民発電所 理事長)
市民主導で気候市民会議を開催している神奈川県厚木市の事例報告がありました。脱炭素社会実現への関心から、市民発電所の開設と運営を行っていたところ、その先に続く展開として気候市民会議の実施に踏み切った、という経緯について説明がありました。
先行事例を持つ自治体の担当者との交流、市の関連施策・計画にも資する形での枠組みの提案や交渉の過程、資金調達の方法など、現在進行形で進んでいるあつぎ気候市民会議の様子が紹介されました。

第1部の最後には、パネルディスカッションおよび質疑応答があり、政策決定への接続やその実効性に関する気候市民会議のインパクト評価、複数回にわたるため負荷がそれなりに高いと考えられる会議に参加することについての市民の積極度、マイノリティの立場に置かれる人々への参加にあたっての配慮の在り方、等についての意見交換が行われました。

休憩をはさんだ第2部では、5つのグループにわかれて、ディスカッションを行いました。

気候市民会議には定型的手法があるものの、その具体的な実施を考える際には、様々なことを目的に応じて決定する必要があります。可能な限り定型的な方法で気候市民会議を実施し、それを広げていくことが、行政との協働を促進するという点でも肝要という意見もあれば、関心を持つ層を増やす、仲間をつくる等の目的に応じて自由に設計していけばよいという意見もありました。

気候市民会議のメリットや評価、枠組み・手法等に対する様々な疑問や意見、いざ実施に向けて検討した際の立場や考え方による認識の違い、学生団体主導で行われた大学の「気候学生会議」の実践事例の紹介、人的ネットワーク形成や実施に係る人のキャリア形成など、この催しのタイトル「気候市民会議の多様な開催を考える」の通り、グループごとに多様な話題で議論が盛り上がっていました。

環境教育等促進法

正式名称は「環境教育等による環境保全の取り組みの促進に関する法律」(平成23年6月改正)。環境行政への民間団体の参加と、多様な主体による協働を推進するための規定が多く盛り込まれている。

協働取組

国民、民間団体等、国又は地方公共団体がそれぞれ適切に役割分担しつつ、対等の立場において相互に協力して行う環境保全活動、環境保全の意欲の増進、環境教育その他の環境の保全に関する取組。

ESD

持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)。一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境と関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革するための教育。

地域循環共生圏

各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方。

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