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地域の“やりたい”を行政に“伝わる形”へ―地域の【翻訳家】秋田大介さんが灯す、未来への火種
更新日:2026年01月27日
地域(民間企業や住民団体など)には、“こんなことができたらいいのに”という想いが数多くあります。けれど、その想いをどう制度やルールに結びつければいいのか分からず、行政との連携に悩む場面も少なくありません。
兵庫県を拠点に活動する株式会社イマゴト(https://ima-goto.com/)代表の秋田大介さんは、元神戸市職員です。行政と民間の両方を経験してきた立場から、自らを【翻訳家】と表現します。
秋田さんは、地域の“やりたい”を、どのように行政に“伝わる形”へと【翻訳】しているのでしょうか。

行政の判断には、必ず『理由』がある
「行政が難しいと言うとき、そこには必ず理由があります」秋田さんはそう断言します。行政との連携が思うように進まない場面では、行政側が慎重すぎる・融通が利かないと感じてしまうこともあります。
しかし、行政の判断は、感情ではなく構造(施策の枠組みやルール、予算等)によって決まっています。
そこで秋田さんがまず行うのは、行政が難しいと判断した理由を分解することです。予算の問題なのか、制度・法律の問題なのか、管理責任や安全性の問題なのか。一つの判断として受け取るのではなく、どこが引っかかっているのかを整理していきます。
ここが、対話を前に進めるための【翻訳】の出発点になるそうです。
“やりたい”を削るのではなく、形を変える
「一方で、地域 の“やりたい”も、そのままでは行政にはなかなか伝わりません。
大事なのは、熱意をそのままぶつけることではなくて、行政の言葉できちんと伝わる形に整えてあげることなんです」と秋田さんは話します。例えば、○○公園で定期的にイベントを開催して地域に賑わいを作りたいという想いだけ伝えても、そのままでは行政側からOKが出ません。
行政は、社会をより良くするとともに住民生活を守る立場であるため、取組に公共性はあるのか、継続性はどう担保するのか、危機管理体制は確保されているのか、法律や条例に沿っているか、といった観点で判断しています。地域づくりの熱い想いをこうした観点に答えられる形に整理して、はじめて行政側に伝わります。
秋田さんは、地域の想いを一度分解し、この部分は今すぐできる、ここは段階を踏めば可能になる、ここは今回はやらないと整理したうえで、行政と共有します。想いを削るのではなく、実現できる順番と形に組み替え直す。それが、秋田さんの言う【翻訳】です。
そして秋田さんは、自分の役割を「大きなエンジンではなく、火付け役」と表現します。
すべてを自分で動かすのではなく、地域の中にある意欲がこれならできそうだと動き出すところまで整える。その最初の一歩に火をつければ、あとは地域自身が走り出します。
【翻訳】とは、地域が自走するための着火点をつくる仕事だと、秋田さんは考えています。
小さく始め、実績を信頼に変える
兵庫県加古川市の地元企業・株式会社ムサシが一級河川・加古川の河川空間で進めるまちづくりは、秋田さんの【翻訳】が機能した好事例です。ムサシの“河川をもっと自由に楽しめるように”という大きな構想に対し、秋田さんは、いきなり全体像を示すのではなく、何年も公園や河川敷で開催し続けている朝市(https://634asaichi.com/)から取組を広げていくように提案しました。行政と相談しながら、実績を積み重ねることで、ルールを守りながら取り組める、任せても大丈夫だ、という信頼が行政側に蓄積され、取組は加古川市かわまちづくり賑わい交流拠点整備運営事業※など、より大きな官民連携へと発展しています。現在は2028年を見据え、河川敷にカフェや遊具、トイレを備えた憩いの場の整備が進行中です。自然そのものが遊び場となるよう配慮し、次の世代に川と親しむ風景を残すことを目指しています。
「中間支援の仕事は、企画を通すことではなく、信頼が循環する状態をつくること」―秋田さんの言葉は、この取組の歩みそのものを表しています。
※河川空間の利活用に関する国土交通省の制度(RIVASITE/河川空間利用規制緩和制度)を加古川で全国初めて検討・活用する事業




【翻訳】できない案件も、正直に見極める
一方で、すべてが実現できるわけではありません。秋田さんは「【翻訳】できない案件を見極めることも大事」だと話します。責任の所在が明らかでない、安全性がどうしても担保できない、将来世代に過度な負担を残してしまう、といったものは無理に前へ進めない。その判断の軸になるのは、「それが本当に地域の未来のためになるかどうか」だと言います。
「何でも引き受けない。自分が全部背負わない。」そうした線引きを意識することが、結果的に地域と長く関わり続けることにつながると、秋田さんは考えています。
中間支援に携わる人へのメッセージ
最後に、中間支援を担う人へのメッセージを伺いました。
「中間支援は、制度と現場の間を行き来できる、面白い立ち位置です。だからこそ、机の上だけで考えず、現場に出て、その人が何を大事にしているのかを聞いてほしい。行政の立場も、地域の想いも、どちらも否定せずに【翻訳】する。それを続けていけば、地域は必ず動きます」と秋田さんは実感を込めて話します。地域づくりに必要なのは、特異な能力ではありません。
想いと制度の間に立ち、言葉と仕組みをつなぎ直す【翻訳者】の存在です。 秋田大介さんの実践は、その具体的な手本を示しています。
感想
取材を通じて印象的だったのは、秋田さんが【翻訳者】であることに加え、自分の縁やつながりを“カード化”し、課題や状況に合わせて誰と誰をつなぐべきかを冷静に見極め、適切なカードを切るように、必要な人を必要な場へとアテンドしている姿でした。それはまさに、中間支援のハブそのものでした。
背景には、神戸市職員として実施した1000 SMiLE project (1000SMiLE事務局(@kobe1000smile) • Instagram写真と動画)やBEKOBE会議(https://www.city.kobe.lg.jp/a55197/shise/kekaku/jutakutoshikyoku/kobetoshin/minasannokoe/300ninkaigi.html)など、官民を越えた対話と実践の積み重ねがあります。民間と行政の意思決定のプロセスやスピードの違いを理解したうえで、進めない、待つという判断ができるからこそ、無理のない形で関係性が回り続ける。 その点に、中間支援が仕組みとして機能している強さを感じました。
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正式名称は「環境教育等による環境保全の取り組みの促進に関する法律」(平成23年6月改正)。環境行政への民間団体の参加と、多様な主体による協働を推進するための規定が多く盛り込まれている。
国民、民間団体等、国又は地方公共団体がそれぞれ適切に役割分担しつつ、対等の立場において相互に協力して行う環境保全活動、環境保全の意欲の増進、環境教育その他の環境の保全に関する取組。
持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development)。一人ひとりが、世界の人々や将来世代、また環境と関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革するための教育。
各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方。








